阿片戦争

江戸時代、太平の眠りからの覚醒のきっかけになったのは、ペルーの来航だが、そこから実際に維新回天に向かうエネルギーには、「阿片戦争で全てを失った中国の二の舞になりかねない」という恐怖感が特に知識階級の間ではあったようだ。

阿片戦争(上) 滄海編 (講談社文庫)

阿片戦争(上) 滄海編 (講談社文庫)

陳舜臣の小説という窓を通して、あらためて、歴史の中での阿片戦争の意味を考えた。
小説の中の脇役の一人に石田という日本人が登場するが、彼の目で見た阿片戦争と中国は、その後、吉田松陰勝海舟や多くの幕末の志士、知識人が抱いた「なんとかしなくては」を予見させるものと言える。

昨年燃えさかった中国での反日運動は、歴史における日本の横暴、日本軍の残虐を中国が決して忘れず、ある意味、それを国民一体化のバネにしようとしているように見えるが、小説阿片戦争で描かれたイギリス兵の悪行を見ると、戦争の本質としての残虐、というものは古今東西変わらない、ということがよくわかる。その中で、中国は、なぜ阿片戦争を持ち出しイギリス排斥、という方向でなく、日本に対する反感をあおり、挑発するのか。
どうも、距離的に近いから、というだけではない、さまざまなものが背景としてあるように思う。